私は埼玉県志木市長として、全国初の25人程度学級やホームスタディ制度を実施してきましたが、実施主体である市町村や教育現場に「何の権限も責任もない」現行の義務教育制度に強い危機感を持ち続けてきました。この危機感から、この度「教育委員会廃止論−義務教育の再生」(6月末日発売:株式会社弘文堂)を全国出版しました。
私の危機感は、権限も責任もない教育現場に創造性や自主性が生れるはずがなく、一方では、機械的な教育環境は多様な人間性を持つ児童生徒に受け入れられるものでは無いからです。教育改革が重要な課題になっていますが、義務教育を支える現行の教育委員会制度には、有識者もマスコミも触れることをタブーとさえしています。
「教育の政治的中立性」を守るため、あるいは、机上でつくられた美しい理想論が余りにも完璧であるからでしょうか。しかし、この制度で運営されている義務教育の実態は、理想論とは異なり、政治的中立性(知事や市町村長からの独立)さえ確保されていないのが現実です。
さらに、教育の主体的な構成員である校長も教員も都道府県からの単なる「派遣職員」となっています。学力の低下は総授業時間数の削減がひとつの要因かも知れませんが、最大の原因は教育委員会制度の持つ理想論と実態との余りにも大きい乖離です。その被害者は、文科省でも市町村長でもなく、将来に無限の可能性を持った子ども達です。
この本を通じて多くの方々が教育委員会制度を再検証し「義務教育の再生」に向けて、本質的な議論が起きることを期待しています。
平成17年7月